9月16日(土)に開催されたWordCamp Tokyo 2017(セッションデイのみ)に参加してきました!イベントの概要、詳細情報は公式を見ていただくのが間違いないかと思います。(WordCamp Tokyo 2017公式サイト)
ざっくり感想からいうと、めちゃくちゃ楽しかった!行ってよかった!ので、今年行かれなかった方も来年行きたいな〜と思ってもらえるように、レポートします!
目次
なぜ参加したのか
このイベント、知ったきっかけはSNSなどでデザイナーさん・エンジニアさんが情報を流してくださっていたからなのですが、参加するかどうかはちょっと悩みました。
だって、WordPressはまだブログ更新するくらいでよくわかっていないし…技術系のイベントって難しい話が飛び交うんじゃ…しかも行ってもぼっちだよね…という不安ばっかりだったから。
でも、参加予定の方々のツイートに徐々に参加したい欲が高まっていきました。「あ、あの人も来るんだ!」みたいな。
何より、デザイナーりささんのこの記事に背中を押してもらいました。
初心者も楽しめるよ、大丈夫だよ、というのをご本人の実体験で書かれていたので、これはとにかく行ってみよう!となったわけです。
WordPressはまだ全然勉強できていなかったので、学び始めるにあたって一つのきっかけになればいいな、という気持ちもありました。
そんなこんなで参加したWordCamp Tokyo、大正解!でした。
なぜ「行ってよかった」のか
参加してから少し時間が経って、「どうして楽しかったのかな」と振り返ってみると、私の場合は以下2点に集約できました。
- セッションを聞いて知識を得た、勉強のきっかけ(刺激)になった
セッション内容はこの後まとめますが、初心者でも楽しめるお話もあり、わかりやすく発表されるスピーカーさんのお陰で「難しくて無理!(><)」となることなく参加していられました。「私には難しそう…」と思っていたことも、基礎を噛み砕いてお話いただいて、「私でもできるかも!」と思わせてくれるセッションもありました。ありがたい。 - 普段SNSで発信を見て素敵だなと思っていたデザイナーさん・プログラマーさんと直にお話しすることができた
私は普段Twitterで現役デザイナーさん・プログラマーさんをフォローして発信を見ているのですが、尊敬する方、憧れる方、あるいは密かに「仲良くなりたいな〜」と思っている方、たくさんいるんです。今回そんな方々といっぱいWordCamp Tokyoでお会いできて、ご挨拶したり、お話したりできました。感無量。こんな風に業界で活躍されている方々との交流は、モチベーションに繋がるんです。
聴講したセッションまとめ
聴いてきたセッションを私の理解の範囲内でざっくりまとめていきます。なお、公式サイトに当日の発表に使用されたスライドが掲載されているので、そちらも併せてご覧ください。
Gutenberg が切り開くWordPressの新UX
西川 伸一さんのセッション。
Gutenbergという、WordPressの新しいエディタのお話でした。まだベータ版ですが、プラグインとして提供されており、インストールして試すことは可能だそうです。(詳しくはこちらを見ていただくのが良いかと→WordPress.org日本語ページ>プラグイン)
名前の由来はヨハネス・グーテンベルク、活版印刷技術の産みの親ということでした。WordPressの使命は「Democratization(民主化) of Publishing(出版→発信?)」、つまり技術的なことがわからなくても誰でも発信ができるということの実現。活版印刷は、当時一部の権力者が占有していた知識を一般庶民に解放することになりました。活版印刷が知識の自由化を招いたように、WordPressがネット上での情報発信の自由化を果たせるように、という開発コミュニティの気持ちが表れたエディタなんだそうです。
「誰でも簡単に」とはいうものの、WordPressの管理画面って意外と難しい…それを本当に簡単にする取り組みが、この新しいエディタを含めたWordPressチームの直近の課題とのこと。Gutenbergとカスタマイザーを組み合わせて使用すると、全くの素人でもコードを書かずに自分で一からWebサイトを作れてしまうのだとか…
自分でWebサイトを作りたい人には嬉しい話な反面、Webサイトの制作に携わる人にとっては仕事が減るかもしれないという脅威ですよね。最後に西川さんは、次のように提案されて発表を終えました。
デザイン・構築をする人は、「デザイン・構築をするだけ」以上の価値提供をしていく必要がある。また、テーマやプラグインの作者は、今までのテーマ・プラグインが正常に作動しなくなる可能性があるので、すぐ対応できるようにアンテナを張っておくこと。
WordPressに限らず、自動化がどんどん進んでいる今の世界で、自動化できない部分で何ができるのか、常に考えて行動しないといけないなぁと思います。まずはこの新しい便利なツールを自分でも触ってみるところから始めます。
これだけは知っておきたい「Webアクセシビリティ」のこと
植木 真さんのセッション。
このセッション、学ぶことが本当に多くてたくさんメモをとってあるのですが、何より冒頭、
「80歳の全盲のおばあちゃんがワークショップに来ていた。アクセシビリティで迷った時は、『これならあのおばあちゃんはインターネットを使えるかな』と想像する」
という植木さんのコメントが、とても印象的でした。
セッションは一問一答形式で、「アクセシビリティのウソホント」を暴いていきます。
- 文字サイズ変更ボタンは設置すべきか?→No!本来はブラウザが用意すべき機能
- アクセシビリティを確保するとデザインがダサくなる?→No!腕のいいデザイナーなら両立は可能、そういうサイトも存在する
- ガイドラインを読んでも難しくて理解できない…→様々なテクノロジーに対応できるよう抽象的な規定になっている。Webアクセシビリティ逆引き辞典も整備中なので参考に
- アクセシビリティは障害者対応だから、健常者には関係ない?→健常者なら100%不自由でないというわけではない。「◯◯しづらい」を「◯◯できる」「◯◯しやすい」に変えることは誰にとっても使いやすいものになる
- アクセシビリティへの取り組みは、企業にとっては儲けに直結しない?→単純に使える人が増える=お客様との接点が増える、機会・チャンスが増える。案件数が増えているため、できる製作者にとってもチャンス
印象に残ったものを挙げてみました。
他にも、わかりやすいスライドのご紹介があったり(「Webコンテンツで「ちょっと」気をつけたいこと」)、「プレゼン芸人」はじめアクセシビリティを面白おかしく歌や動画にして配信している方々がいらっしゃるとか…とっつきやすく、面白く学べるよう工夫されている方がたくさんいるということですね。
ルールや技術も勉強しつつ、「あのおばあちゃん、これでちゃんと使えるかな?」の視点を忘れないようにしたいと思います。
WordPressをこれから始める人のためのテーマ講座
高見 和也さんのセッション。
WordPressのテーマを作ったことがない人向けに、「テーマ作成は難しくないんだよ!」と力強く語ってくださいました!
「どのディレクトリに」「〇〇という名前のファイルを作成して」と具体的で技術的なお話で、こちらでその内容を詳細に書くのは今回は控えます(自分で手を動かしてやってみて理解してから別途記事書きます。じゃないと中途半端な理解で間違ったこと書きそうで…)。
「テーマの構造をしっかり理解して、必要最低限の機能をきちんと実装する。シンプルに構造さえ意識すれば、そこまで複雑なコードは必要ありません!とのことでした。
私はこの講演に触発されて、ついにWordPressの教科書を買ってしまいました!私でもできるかも?!と思わせてくれたセッションでした(できるようになるかどうかは私次第ですねぇ…)
なぜ人は怪しい壺を欲しくなってしまうのか
染谷 昌利さんのセッション。
人がどのようにコントロールされ、ものを買っているのか。「怪しい」から「欲しい」に変わるまでの人間の心理のプロセスを理論的に、かつ会場内での実験を通して直感的に解説した、とても興味深く印象的なセッションでした。
「怪しい壺」を人が買わないのは、「怪しい」から。これを売るにあたっては、
- 怪しくないことを丁寧に説明して価値を理解してもらう(真っ当なビジネスのやり方)
- 一瞬でも「あれ?怪しくないんじゃない?」と思わせる
このいずれでも、ものは売れるのだそうです。
※ここでの「価値」は、「人の役に立つ事象*希少性」。例えばダイヤモンドがその辺に転がっているものなら価値はない。手に入りにくい=希少性。ただし、希少でも欲しい人・欲しくない人がいる。「価値観」は人によって異なることを理解する必要があります。
価値を適切に伝えるためには、インパクト(対象に響くタイトル)、翻訳(対象者がわかる言葉で伝える)、意欲の向上(便益生を明示し、興味を高め信頼度を上げる)が必要です。お金を払うことは非常にエネルギーが要ることであり、無関心→興味あり→購入検討→比較→購入の一つ一つの壁を丁寧に超えて行く必要があるわけです。
一方で人は、無意識に自分にとって好ましい方向にストーリーを作るもので、自分が思っている以上に直感や思い込みで行動しているそうです。みんながやっていることは価値があると思ったり、自分が「良い」と思っている人の言うことは「良い」と思ったり、限定品など限られたものほど欲しくなったり。デザインで言えば視認性の高さ、より太い・大きい方が信じやすい。この前提を踏まえると、人の脳に対して簡単に印象操作ができると。
また、人間は物語に弱いです(これはすごくよく分かる…私自身がドラマとかストーリーとかに弱い人なので 笑)。商品のPRに苦労話を盛り込んだり、対価を支払うことで得られる「幸せな未来」をストーリー立てて想像させたりして、商品の価値を訴えかけ、買わせるという手法が使われています。
そうして、「期待感」と言う感情がこぼれ落ちた時、「怪しい」は「欲しい」に変わるのだそうです。
染谷さんの、「言葉には人を操るパワーがある」という言葉は少し怖い響きかもしれませんが、「これをやっていて恥ずかしくないか?を問いかけながら使うこと。そこに志や商品・サービスに対する思い、人を喜ばせたいと言う思いがあるかどうかが大切。その上で言葉を使うことは間違いではない」とのラストメッセージが、様々な手法・テクニックを使う上で一番大事なことなのだろうと思います。
組み合わせで簡単!WP REST APIとGitHubでつくる、よりよいメディア運営のワークフロー
中村 勇希さんのセッション。
タイトルからしてとても技術的な内容なんじゃないかとやや緊張気味で聴きに行きました。しかし中村さんの信念、それを実現するためのテクノロジーの利用について、具体的な例も挙げながら説明してくださって、技術的な部分で分からなかった(知らなかった)ことはさておいても、非常に分かりやすい講演でした。
話は、「信用」についてから始まります。良いメディアとは「信用がある」メディア、信用がなければお金も生まれない。SNSでシェアする情報は、「私はこんなことに興味があります」という「自己表現」の一つですが、このシェアした情報に事実と異なる内容が含まれていれば、それは自己表現に反します。つまり、嘘を書く人間は信用されません。
一方、人間はミスをするものなので、現場ではそれを前提としたチェック機能として「校閲」を実施しています。誤字脱字だけではなく、表現が適切かどうか、より良い表現がないかまでチェックします。人の目でなくても、プログラムのチェックとしては「lint」と呼ばれるツールがありますが、文章の校閲ツールとして「textlint」が利用可能です。
人に見てもらってコメントや修正が必要な時、Githubを使えば行ごとにコメントでき、指摘箇所が一目瞭然。さらに、Github上の修正をWordPressに反映する手間は、WP REST APIを使うことで省くことができるとのこと。また、「継続的インテグレーション」ツールを使えば、こういった修正を監視し、同時に反映してくれる。こういったツールを使用することで、執筆、制作に集中できます。
機械によってチェックし、人の目を通して正し、信頼できるものを書く・作ること。その過程で生じる手間はツールで効率化。
「信用」に足るものを世に出すことを実現するには具体的にどうすれば良いか、信用の重要性と具体的な方法とを明確に示してくださった講演でした。
なお、最後に中村さんからのメッセージとして、「私の目線は私にしかない。何者かになれてからではなく、今の私にできることをやる」というメッセージがありました。初心者だったとしても、習熟してなかったとしても、「初心者だから書ける記事」というものもある。私自身ブログを書いていて、なかなかテーマが思いつかなかったり、そもそもその背景には「こんな初歩的なことを書いて恥ずかしくないか?」「わざわざ記事にするほどではないかも…」というモヤモヤとした気持ちがあったりします。それを振り払って、まずは私の目線で記事を書いていけばいい!と思わせてくださいました。
みんなでデザイン、あなたもデザイン
関口 裕さんのセッション。
デザインが「デザイナーだけのもの」からデザイナー以外の人にもひらかれていった過程、それを踏まえて「デザイン」をどう捉えるか、どう関わるかといったお話でした。
2009年頃から、「デザイン思考」という言葉が広まっていったことが象徴するように、デザイナーの頭の中の「ブラックボックス」的であったデザインが手法化され、一般に「ひらかれて」いきました。
また、見た目だけのデザインは共感を呼ばなくなり、ストーリーや物語の設計がデザインとなりました。例えば、iPod発売当初のコピー、ジャパネットたかたのコピー、無印良品の「これがいい」ではなく「これでいい」というコンセプト。こういったストーリーはデザインのカリスマでなくても作れ、またデザインはその手法化と共に誰でも触れられるものになりました。
一方、ひらかれたデザインはその後適切な評価とより良いデザインへの改善のプロセスに入りますが、これを漠然とプロセス化するだけでは評価・結論が「当たり前すぎる」結論になりやすく、開いて発散させたデザインを収束させるプロとしてのデザイナーが必要です。デザイナーは、「広義のデザイン」から「狭義のデザイン」の間の行き来をどれだけできるかが重要。またデザイナーに限らずそのプロジェクトに関わる誰もが、デザインを人に任せきりにせず、スキルの可視化と理念の共有を行って、相手を巻き込むことが大切。
関口さんの講演で面白かったところは、ご自身の息子さん(小学校1年生)の夏休み自由研究(工作)で「デザインをひらく」を実践された、というところ。ただ作って終わりではなく、制作のプロセスをサポートして、本人が「どれだけ好きか」をお友達や先生に知ってもらえるようにファシリテートしたとのこと。作る対象の調査、設計、プロトタイピング、実装、評価という各段階を、小学校1年生が実践できるレベルに落とし込んで実行させていたのがさすがだなぁと思いました。
漠然とではありますが、「誰でも触れられる」ようになったデザインにもっと触れてもらって、もっと目的の実現のために活かしてもらえるように支援するのが「デザイナー」の仕事なのかもしれないなぁと思った講演でした。
【基調講演】wp_next_step – WordPressの次のステップ
高橋 文樹さんのセッション。
WordPressやWebのこれからについて、高橋さん自身の見通しをお話しされていました。
WordPressそれ自体の発展、コミュニティの拡大を10年前から見てきた高橋さん。WordPressは世界のCMSシェア約6割で、ヨーロッパでもWordCamp Europe2017が開かれ、アジアでも2018年にオンラインでのイベント開催が決定しているとのこと。いい流れだWordPress!という一方で…
時代の流れとして、オープンウェブからモバイルアプリ(=閉じたインターネット)でのコンテンツ閲覧に移行してきた・今後もその流れが続くという視点から、SNSに代表されるようにインターネットの世界は細かく分断されて行くのではないか、その行く末はレイシズムや極右国家の台頭、世界の終わり?という暗黒な未来予想を提示されました。。。
ではこれから先は何が生き残るのか?という問いへの答えは、「Web閲覧は減ってもコンテンツは減らない」。CMS(コンテンツマネジメントシステム)からパブリッシングプラットフォームというハブのような形に移行するのでは、「何か」を実現するためのツールとしてのWordPressになるのでは、との予想でした。
現状、より便利なツールにするためにWordPressの開発を頑張っている方々がいますが、人数は決して多くないそうです。人が多ければ良いものが生まれやすく、ぜひたくさんの人に携わって欲しいと高橋さんは訴えていました。
例えば、コアをはじめとするリポジトリにコントリビュートすること。テーマやプラグインを作って公開すること。翻訳、ドキュメントの整備、イベントの主催や参加。ブログを書くこと。「好き」って言うこと。長く続けられる貢献の方法で、かつ対価が得られる仕組みを考えて、自分ができることから参加して欲しい。とのメッセージに、こうしてWordPressの恩恵に預かってブログを書いている私も、できることを見つけて増やしていけたらなぁと思った次第でした。
まとめ
なんと7つもセッションを聴いたのか!と今更この記事を書きながら驚きました 笑
切り口は様々でしたが、どれもぎゅっと詰まった講演で、集中して聴き入ってました。
セッションの後には懇親会もあり、参加者との交流を楽しみながらLTを聴いて、賑やかな会でした。たくさんの方とお会いすることもできて、大満足!最初の参加動機としてはこちらの方が大きかったので、楽しみで行ってみたらがっつり勉強もできて…一石二鳥でした。
なお、セッション以外にはスポンサー各社さんのブースがあったり、スタンプラリーが用意されていたり(アイキャッチ画像のどら焼きはスタンプラリーの景品!WordPressキャラクターのわぷーがWordCamp Tokyo2017バージョンの「ウィズわぷー」となってプリントされています)、WordPressのプラグイン名やタグのかるた大会があったり…それはもう盛りだくさんのイベントでした。可愛いわぷーのステッカーもゲットできました(わぷー大好き)!
気になったけど行けなかった、参加に躊躇してしまった、そもそもそんなイベント知らなかった…そんな方も、この記事で「楽しそう!」「行ってみたい!」って思っていただけたら、ぜひ来年のWordCampに足を運んでみてくださいね。