Webディレクターとして就職が決まって、初出勤日まで少し日にちがあったため、コンチさんに「読んでおいたら良い本ありますか?」って聞いたらこの本をオススメしてくださいました。

『ガッチリ成果を出すWeb担当者の教科書 便利テンプレートデータで実務を効率化!』

読み終えたので、レビューしたいと思います。

概要

この本は、新たにWeb担当者になった人が、既存の自社Webサイトについて把握するところから始まり、その後どのように目標を立て、どのように改善していくのか、基本的な概念からツールの使いどころまで理解し実践できるよう書かれています。
専門用語や略称は易しく解説されていて、全体的に具体的で平易な表現が心掛けられているため、「Web担当者になっちゃったんだけど、初めてだし何やって良いか全くわかりませんどうしよう!」みたいな人でも、すんなり読んで飲み込める本だと思います。一つ一つの説明が、本当に丁寧なんです。

著者の前書きには、

ホームページにおける「成果」とは、じつにかんたんです。
「来てほしい人に、来てほしい数訪れてもらい、見せたい情報を見せ、してもらいたい行動をしてもらう」
ホームページの運営は複雑に見えて、実際にはシンプルな「市場とのやりとり」です。
「検索エンジン対策やネット広告のノウハウを覚えた人が成果を出す」のではなく、「市場と正しくやりとりができる人が成果を出す」のです。

とあります。
KPI!CVR!SEO対策!…何となく、「それって何?難しそう…」という感覚を抱いてしまうWebサイト運営ですが、ちゃんと基本を押さえて取り組んだら成果が出せるんだよ、という主張のもと、本文も一貫してその姿勢で書かれていて、納得しやすいです。

特定のツールの使い方や一部の専門知識を深める内容ではないので、この本を出発点にして興味のある・必要な分野を掘り下げて勉強していくのが良いと思います。

Web担当者ではなく、制作会社側に就職する私にとっては、これから自分のお客さんとなる人が、どんな体制で、どんな仕事をしていて、どんなことを考えているのかを理解するのにとても良い本でした。
また、これまでの自分の勉強は、「絵として見やすい・整ったデザイン」とその絵をカンプ通りにブラウザ上に表示するためのコーディング・ツールの使い方ばかり。「お客さんとのコミュニケーションツールとしてのWebサイト、販促ツールとしてのWebサイト」を効果的に作って運用していくという観点は抜けていたため、実務としてWebサイト制作に携わることになった時に何を意識しなくてはならないか、の基本を学ぶことができ、就職前の準備として非常に有用だったように思います。

本の構成・各章の概要

この本は下記のような構成で進んでいきます。

  • 序章 Web担当者になったら最初にやること
  • 第1章 ホームページとマーケティングの関係をおさえる
  • 第2章 目標設定のポイント
  • 第3章 お客様の調査をしよう
  • 第4章 ホームページの資産を活用する
  • 第5章 コンテンツ設計&作成のコツ
  • 第6章 ワイヤーフレームで効果の出る構成を設計する
  • 第7章 効果的・効率的な運営をするには
  • 第8章 成果をきちんと測定・共有する
  • 第9章 改善を繰り返していっそうの成果を引き出す

各章ごとに概要と感想を紹介します。

序章 Web担当者になったら最初にやること

自分がWeb担当者になった時、前任者から引き継ぐべき最低限の情報や、社内の関係する部門の把握、日々の最低限のルーチン業務、自社サイトを把握するにあたって必要な基礎知識が丁寧に紹介されています。
何も知らずにWeb担当者になったら本当に助かる章だなぁと思いながら読みました。

第1章 ホームページとマーケティングの関係をおさえる

マーケティングとは何か?の概念の説明から始まりますが、印象的だったのは

顧客とコミュニケーションすることによって商品の良さを伝える。このことに尽きるのです。…(中略)…Web担当者は、マーケターとして、「商品」と「顧客」の2つを大切にして、そのエキスパートにならなければなりません

という部分でした。この章以降も根底にはこのことがあって、その上にWebならではの知識やテクニックが積み重なっていく。自社の商品の良さはどこにあって、それはどんな人に喜ばれるのか?これを突き詰めることを忘れずに、Webサイトを作って・更新していくことが重要なのだと学びました。

第2章 目標設定のポイント

ややテクニカルな内容になってきますが、KGI,KPIといった用語の解説、KPIとKGIの関係、CVRの数値に対する考え方、を学んだところで、数値目標の設定の仕方を解説してくれています。
ゴールから逆算した顧客のアクションのプロセスを導き出す。ゴールに至るまでのプロセスごとに現れる数値を増やすために打ち手を考える。検証して、因果関係に基づいた数値目標を設定する。段階を踏んで理論的に解説されているので、略称でなんとなーくのイメージだけだった用語たちですが、もし今後関わることになっても曖昧なままで向き合わずに済みそうです!

第3章 お客様の調査をしよう

検索キーワードの調べ方とそこから見えてくるユーザーのニーズ、ニーズへの対応の仕方、ライバル企業の調査、アンケート調査や会員データ分析の方法と、ユーザビリティ調査の方法。
アンケート調査の項では、設問設計の注意点、集計のコツも解説されていて、この分野のみでなく色々な場面で応用できそう…。
知識のない私が「マーケティング」と聞いた時に真っ先に思い浮かべていたのが「市場・顧客の調査」だったのですが、「調査」って具体的に何するの?と思っていました。Webサイトを運用して実現できること、と、その実現のための調査との関係や具体的な手法がわかる章でした。

第4章 ホームページの資産を活用する

自社のWebサイトに蓄積してきたコンテンツは、訪問者を集めて帰らせない「資産」なんだそうです。でもページに色々と問題がある場合、逆に訪問者の興味を失わせてしまうので、それらの問題を一つ一つ解決しながら、さらに改善するための地ならしをしよう、という章です。
この章に出てくる「問題あるページ」については、いちユーザーとして「あーあるある、こういうサイト」と思いながら面白く読んでしまったのですが、自分がWebサイトの制作・運用側になった時に絶対出会う(そして悩む)問題だと思うので、笑っていられません…

第5章 コンテンツ設計&作成のコツ

4章で地ならしをしたサイトに、さらにコンテンツを追加していくにあたって、どのようにコンテンツを設計するか、どんなタイミングでコンテンツを追加していくか、を論じています。
興味深かったのは、「会社概要」のページをいかに魅力的にするかを解説したセクションでした。会社概要という一般的に非常に事務的なページを「魅力的に」することを、この本を読んでいなければきっと私は考えなかったように思います。でも、確かに企業にとって「自己紹介」のページなんですよね。お客さんに興味を持ってもらうために、あるいは投資家に魅力を伝えるために、何をどう見せたら良いかをしっかり解説してくれています。

第6章 ワイヤーフレームで効果の出る構成を設計する

これは個人的にとても重要な章!タイトルの通り、ワイヤーフレームについて論じた章なのですが、「どこに何を配置するか」も具体的に提示されていますし、要素のレイアウトについてだけでなく、リンクの文言や訪問者の心理も交えて、「どのようなリンクならクリックしたくなるか」ということが具体的に書かれています。
Web担当者もそうなのですが、どんな立場だとしてもWebサイト制作に関わる人がこれを知らずにWebサイトは作れまい…!何度も読み返したいですし、この章の内容を踏まえていろんなWebサイトを見ながら研究したいですね。

第7章 効果的・効率的な運営をするには

ここまで学んできたことをベースに、日々の運営の中で何を気をつけたら良いかが書かれています。コンテンツを継続的に更新するための計画の立て方や、掲載するニュースをキャッチする・生み出す方法にも触れていて、ネタ切れ回避のヒントになりそう。リスティング広告についてやソーシャルメディアの活用についても、ほんの少しではありますが触れられています。

第8章 成果をきちんと測定・共有する

アクセス解析ツールを利用してデータを見るのは良いが、どのようなデータをどういう観点で見るのか。そのデータをどう利用するのか。さらには、社内報告会や役員報告でそのデータを効果的に伝えるには?といったところまでカバーされています。Googleアナリティクスを触ってみたは良いものの、どの機能を使ったら良いの?数字は分かったけどどんな意味があるの?分析はしたけどどうやって生かすの?という業務の中で出てくるであろう壁を、順を追って取っ払ってくれます。

第9章 改善を繰り返していっそうの成果を引き出す

8章までで学んできたことを総動員しつつ、更に良い結果を出すためのダメ押しです。自社のWebサイトを把握して、改善して、分析して、更に良くしていく…のサイクルを日々の業務に組み込むTipsが盛り込まれています。いわゆる「PDCAサイクル」も、Webサイトの運営のことを考えた時には何がどこにあたるかの具体例が示されていて、効果的にサイクルを回せるように説明されています。ここまで来たら、もう迷いなくWeb担当者としての業務を遂行しながら結果を出していけそうです!

まとめ

何度も言うようですが、丁寧で、平易で、具体的な内容がとても読みやすい、初心者のWeb担当者あるいはこれからWeb制作に携わる方に本当にオススメの書籍です。

この記事で「読んでみたい!」と思った方がいらっしゃったら嬉しいですし、「何をしたら良いんだー!!」とお困りの新人Web担当者さんに届いたらなお嬉しいです!